― クリーク砦 ―[見張りに登る前、死体の詰まれた山の前で十字を手に立つ。サシャ自身は、森の民のおおよそがそうであるよう、自然を神と置く者だが、母親は違う神様の存在を信じていたのを遠い記憶の中でも覚えている。今思えばよく父と仲違いしなかったものだが、そこは二人とも上手にやっていたらしい。『自分が信じる神様は大事なものだが、 だからといって他の神様を蔑ろにしてはいけない』そう言っていた父の教えの通り、他の神を信じた者へは、他の神への祈りを捧げるように、錆びた十字を握る。]