[亜麻色が揺れるは僅かな時間。常のいろを取り戻した瞳に映るのは、悲鳴にもにた声を上げる黒の将の姿。>>2:310] ……いま、なら。[容易く獲れる──とは、思うけれど。銀月をそちらに向ける事は躊躇われた。父たる魔戦士が時に愚かと称された所以。戦う者の矜持は、その血と共に娘にも受け継がれている。主命とあらば道を外れた行いなども辞さないが、そうでなければ娘は娘なりの、戦士の誇りを持って動く。何かに意識を取られた相手に刃を向ける気にはなれなかった]