チコリの花言葉のひとつに「裏切り」というものがある。
この淡い色をした花に当てられた言葉の由来が、今も伝わっている。
かつて、海の上を蒸気船が走り、大国が次々と植民地を増やしていた時代、グロル海峡を統治していたウルケルという国にも大艦隊が押し寄せてきたことがあった。
ウルケルは帝国に対して戦うことを決めたのだが、ウルケルに属していた一人の女領主が戦わずして帝国に下ったのだ。
彼女の領地は、チコリの花咲く街として広く知られていた。
女領主の行動を、ウルケルの民は裏切りだと謗った。
だから彼女の花であるチコリにも、裏切りの意味が寄せられたのである。
しかしこの逸話はもうひとつの花言葉の由来にもなっている。
彼女が、自分の身を犠牲にしてでも街と民を守ろうとしたと知る者は、この花にもう一つの意味を付け加えた。
「気高い護り手」。女領主の魂が宿る花であると。
── 『花言葉 〜花にまつわる20の物語』