[只今、魔界では天の御使いの愛玩が流行している。
「天使を飼ったことがあるか?」とは、昨今よく耳にする挨拶だ。
流行に敏感な者は我先にと飛びついたが、腰の重い我が身をも浮上させるとは。
悦楽に従順に出来ては居るが、その実、此処まで脚を運ぶかは半信半疑であった。他を従えるだけなら、我が眼を用いれば事足りる。
態々、労力を払い、心身を飼い慣らすなど酔狂に過ぎる。
だが、男は一羽の天使を伴い、天獄の泉へと訪れた。
彼が賢く、無垢な、天光の結晶で在ったが為。>>>0:457
彼の心は気高く神のもので在ったが為。>>>0:458
彼は怠惰に飽いた我が身の無聊を慰める。
名も知らぬ一羽の天使を抱いた身は、長く忘れ果てていた高揚感を思い出していた。邪悪に嫌悪を抱きながらも、彼は知ることに弱い。
些細な接触で息を詰めた彼を脳裏に蘇らせるだけで、口元には微笑が浮く。>>>0:460]