では、参る。
[ 何の予備動作も無く、ばさりと漆黒の長衣を翻せば、そこから一団を包むように霧が広がりふわりと浮き上がるような感覚が足元に伝わる。例外はただ一人 ]
カスパル、お前は自身の翼で降りられよう、地上で待っている。
[ 朱翼持つ朱雀のいとし子に、そう告げて、霧の繭とでも言うべきものに包んだ一団を地上へと運び、自らは、その霧の後を、ただゆっくりと落ちていく。
自らの身内の水気と、大気の内の水気を繋ぎ、落ちる速度を微細に調節している、と、一見して分かる者は稀だろう。神ならばこその術、ではあった* ]