人狼物語−薔薇の下国

332 【絶望村】貴方と私が乗れない方舟


女子学生 シュテルン

  ………ありがと…ございます……

[顔の半分を覆うマスクの下でそうごにょごにょとお礼を告げれば、古びたバスのステップを降りる。
その足は帰路を避け、向かうのは村を囲うように茂る小さな森。
それはいつものこと──。
射す日差しが、生い茂る葉によって和らげられたその場所から見上げた先の空は、木々によって手で掴めそうな大きさに切り取られ、そこに滲む青は綺麗だった。

背を地面に付ける。
冬らしい冷えた空気の中、くすんだ緑の絨毯の上に、コートから覗く真っ白なセーラーカラー──隣町の有名校の制服である──が雪のように映えた。
草に触れる肌が焼けるように痛い。
マスクの下で、じんわりと右目の辺りも熱い。
マスクをズラして、手をやれば、そこはぷくりと小さく腫れているのが分かった。]

  ……やっぱり引いてない………

[ひり付く頬を触れながら、溜息と共に吐き出された呟きは白く視覚化する。
肌に触れる空気の冷たさに腫れた肌が熱を帯びているのを改めて感じさせられる。

シンと鼓膜を圧迫する無音に、一つ、諦めたように眼を閉じた。]

(2) 2015/05/01(Fri) 00:16:43

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