―宿屋― こんにちはー。[軽く声をかけながら、勝手知ったるとばかりに宿の玄関をくぐる。手にした籠には、森から集めてきたのだろう果物が盛られている。既に冬の気配が色濃くなったこともあり、集めるのに苦労したのか、細い指先はすっかりと赤くなっていた。] 果物、とってきたよ。 もうすっかり木々も禿げてきているから、 今シーズンはこれが最後かも。[厨房の台に籠を置きながら。寒さにぶるりと身体を震わせれば、纏わり付いた外気が周囲に漂った。]