―ヨアヒムの部屋―
…っ…
[おびただしい量の血と入った瞬間鼻を突いたその臭いに、一瞬入るのを躊躇する。
しかし目を背けてはならない。
震えそうになるその足をごまかして、部屋へ一歩踏みこんだ。
シモンがやったのか、ヨアヒムの遺体は床の上に仰向けで手を組まされていた。
現場の保存ということを考えればその行動はどうかと思うが、シモンの人柄を考えれば仕方ないのかもしれないと、そこには触れずにおく。
遺体は動かされてはいたものの傷の様子がゲルトとは明らかに違っており、人狼に襲われたのではなく、人間に刃物で殺されたのだろうことは明らかだった。
それとも人狼でも刃物で襲い掛かることがあるのだろうか。]**