― 回想/王宮・第二王子私室 ―
[王の間を辞して後、ウェルシュの姿は私室にある。
そこには監査局長の姿、それに加えて幾人か。
いわば分かりやすく、「文書を支持する」であろう人々の姿があった。
第二王子の私室の扉の外には、声が届かぬ距離を保って近衛兵が配されてある。また同時に、部屋の窓にはカーテンが引かれていた。
いずれも王の薨去後に敷かれた警備体制である。
この厳重さが、自然と王宮の現状を物語っている様子だった。
言葉の初めに、ヘルムートの称賛>>1:262を無言で受ける。
続いて例を示すものがあっても、ウェルシュは笑顔を見せることなくそれらを受けた。
やがて上がる顔を見れば、言葉に続きのあることは容易に知れる。
それもまた、ウェルシュは表情を動かさぬままに聞いた。]