[島について最初に思ったことは、静かだ、という事。勿論潮の音や森を渡る風のざわめきはあった。が、人の気配が全くしない。かってはリゾート地として、整備された跡があるだけに、まるで白々とした書割の様な現実感の無さを覚えた。]
[宿泊施設に到着すると、ファミルに断り、『青葉』に自分の荷物を据えた。バルタザールは、あまりこの手の事に興味が無さそうだ、という判断だ。島の俗称ともなる、南側からの海の眺めを感じられる部屋にも未練があったが、階段すぐ側の部屋に控えた方が、出入りする人間の気配を察しやすいだろうという理由だった。]