[鬱蒼とした木々生い茂る山の中、滴る緑の領域を抜けて奥に進めば、やがて行く手に壁が現れる。さほど高くはない石壁には無数の茨が絡みつき、ところどころで白い花を鈴なりに咲かせている。壁に沿って進むと見えてくるのは、瀟洒な作りの門扉。繊細な細工が施された金属の門にもまた蔓が這っているが、押してみれば、門は意外なほど軽く開くだろう。前庭を抜ける小道と噴水の向こうに見えるのは、歴史の風格と軽妙な風合いを共に纏った城。年月に多少削られた城の石材には、やはり野茨が茂っている。]