─朝・談話室─
──それで、ペーターがジムゾンを陥れていて、それでいてジムゾンが無実であるという証拠はどこにあるの?僕には見当たらないのだけれども。
[昨日のペーターを巡る出来事の成り行きについて改めてシモンから話を聞くと、一つの疑問を口にしてみた。]
成る程確かに、彼がジムゾンを殺そうとしたのは確かだろう。でも、少なくとも君から聞いた話で僕がわかるのはそれだけ。
或いはこれも、君達のそれと同じ、数ある妄想的な仮説の一つだけれども。例えば、ジムゾンがペーターを襲ったことは本当で、二人が事故で怪我を負ったことが嘘──つまり、ペーターがジムゾンを殺そうとしたのだとしよう。ジムゾンが襲ってきたため、ペーターが咄嗟に壺を叩きつけたということだね。そして、ペーターは自分のしたことが恐ろしくて──或いは他の何らかの感情から──隠そうとした。それならば、それを彼自身の罪だと感じることもあるだろう。伺い知る限りの彼の言動とは、矛盾しないように感じる。
そして、こんな単純な可能性を考えもしないで、確かめられるだけの要素も得ないまま手を下したことも不思議でしかたがない。