― 紅梅の丘で>>_419 ―
[手練手管は彼には及ばない
でも私だって女ですもの――ここぞという時にはきめるもの
自分さえいれば他に何も要らぬと告げる男に
でも私は欲しいものがあるのと小さく否定の言葉]
私はシグの子供が欲しいわ
[自分と貴方の寿命は違う
どれだけ思いを深めても、其ればかりは自然の摂理
私がおばあちゃんになっても愛してくれそうだけれど
其れでもいつか別れが来るなら、彼は後追いしそうな危うさも秘める
だから鎹が欲しい
この地上に、貴方を縛る枷が欲しい
そうすれば、きっと貴方はずっと私を思ってくれる
思い出してくれるなんて考える。酷い女ね、それでも
手放したくない人がいるのよ、心も体も
その思考は、自分が死んでも親友が寂しくないようにと
やがて曾孫に願いを託した彼女の祖父にも似ている]