― 紅梅の丘で>>_322 ―
[今回だけ、という言葉。守られない気がするのはきっと気のせいじゃない筈
彼と一線越えてから、手練手管に翻弄されている自覚はあるのだ
安心させるような囁きに、安堵している自覚も確かにあるので
今はその言葉、信用しよう
まぁ、彼と共に過ごす時間は、どんなことでも良き思い出なのだから
大事に育てられた箱入り娘
一度愛されることを知ったなら、そして注がれる愛の深さを知ったなら
もう無垢で無知であった元には戻れない、戻らない
何時でも何処でも求められ、彼からの情を溢れるほどに注がれる
だから、きっと私はシグのおねだりを受け入れてしまうのだ。いつも
こうして焦らされ、身体を火照る様にされて
それでも決定的な刺激を与えてもくれない意地悪な恋人
彼が求めてるものが何かは薄々わかるけど
――羞恥があるのよ。分かってよ
それでも絶頂を許してくれない、緩やかで優しい愛撫に
根負けするのは何時も、私の方なのだ]