[彼を苛む触手の基は、安穏とした男ではない。
狼よりも二回りほど大きい、紫がかった球体が触手を操っている。
チキン質の外殻を割り、彼を捉えるのはつるりとした眼球。
瞳孔は昏くも赫く、彼の姿を絶えず投影する水晶球。
彼に与える眼圧は、抑圧を知らない邪視。
本性の姿は理性と本能が逆転し、力の抑制は無為と化す。
食い入り見つめるほど、彼は純正の魔力で焙られ、汚染を受ける。
シーツに溜まった体液の小池は、さて、どちらのものか。
その上、男は本性を晒すと、彼に無茶を働く。
化け物の交接が本来、常識の内に納まる筈もないのだ。
普段、無意識の抑していた箍が外れ、赤裸々に彼を求めて。]