[欲しいものは欲しいだけ奪うが常だった。 欲望とは捧げられるもので、分かち合うものでは無かった。 己の悪徳に、分岐を与えたのは全て、彼の所業。 悪くないと撓る唇が淡い蠱惑を孕んでいる。>>229 彼と共に経験するなら、確かにどんなことでも悦となる。 男にとって、彼とはそういった、特別な存在であった。] …………、[されど、彼が図星を貫くと、沈黙を置くのは己の悪癖。 彼は自らの価値を知らぬらしいが、此方は気が気でない。 何かと比べて優劣を測るなど、愚かに過ぎるが。>>230]