[語られるのは特異な出自を持つ彼が、向けられてきた感情のこと>>_63。
竜としては真っ当な生まれであり、どちらかと言えば自縄自縛に陥っていた自身とは、決定的に異なる思考形成の過程だった]
――わたしにとって、ヴィンセント様は、ずっとヴィンセント様でしかありませんでしたよ。
[だから、柔らかに笑ってそう言い添える。
翼持つ者への憧憬は確かにあった。
『天使』なる者の概念を持っていれば、また違った形の感情もあったかもしれないが]
わたしを呼んでくれたひと――ただ一人のパートナーです。
[それはこの先どのような関係になろうと、揺らぐことのない事実]