…冗談だよ、
君が急げというから、少し本気で段飛ばしをしてみただけさ。
ほらね?時間が必要なのは、君の方だっただろう?
大丈夫、君の嫌がる事をしたい訳では無いんだ。
…怯えさせてすまなかったね。もうしないよ、大丈夫。
[乱した衣服を正してやってから、
幼子を諭すような穏やかな口調であやすように髪を撫でる。
他の誰かにそうしたのと、同じ気持ちで。
其の侭彼の傍を離れようとすれば、
引き留める手を伸ばしただろうか?
けれど、もう、遅い。
溶けはじめていた心の壁は再び固く凍り付いた。
もう二度と、彼で溶かす事は出来ないだろう]