― 私室 ―[訪問者は紅榴候と名乗った。気品漂う佇まいや仕草は貴族と言われても納得出来るもの。その瞳や表情には未だ冷ややかさが表れていたが、僅かに混じる変化は見て取れた]……なるほど。命は命、一つへの対価は一つ、か。二つに対して、となるならば確かに譲歩は為されている。[彼は平等主義者だろうか。もしくは、人の命を鳥獣と同じ価値と見なす者か。相手の言い分は一理ある、と返すに留め、完全な是としては返さない。続けられた提示には、少しばかり悩むいろ]