― エピローグの前に ―
[腕の中の黒い猫は、降り落ちた囁く声に目を覚ます。
これは夢だろうか?
否、背を撫でる掌が、先の言葉を証明する様な暖かさと、
溢れる慈愛を伝えて来るのは、きっと、錯覚では無い。
返事の代わりに伸びあがって彼の唇に口付ければ、彼の腕の中で
猫の姿に転じた時と同じ虹色の煙を纏って、元の姿に戻った。
彼の膝にずっしりと容赦のない重みが掛かっただろうけれど、彼とて男だ、大事は無かろう]
……おや、効果はまだ続いていた筈だけれど。
魔法が解けてしまったね。
[彼は覚えているだろうか、このパーティーの最中話した
真実の愛のキスが如何とか、そんな夢のようなお伽噺。
彼と話した訳ではないが、彼もその場に居た筈だ
さて、これは互いの時が満ちた合図なのか、
はたまた偶々訪れた奇跡か]