[この言葉が彼の耳に届くことがないとはわかってる。
分かっていてこんなことを口にする僕は、きっととんだお人好しで大馬鹿だ。
だけど、それでいいんだ。
だって、ほら。少しだけ――ほんの少しだけど、辛そうだったジムゾンの寝顔が、楽になったように見えるから]
………僕より年上のくせに、世話の掛かるやつだよ。ほんと。
[苦笑混じりにつぶやいて、僕はいつものいたずらを彼のうなじの辺りへと施した。
ちゅっとひとつ、鬱血の薔薇を施し、その出来栄えにくすくす笑う。
ジムゾン自身には見えない場所に落とすそれをオットーあたりが見た様子を想像するだけで、お腹がよじれそうだ。
だけどそんな事をしたらきっとジムゾンを起こしてしまうから。
可愛いいたずらは、今は窓からのぞき込む月とだけ共有して、長い長い夜を共に過ごすのだった**]