いえ。兄上、それは、 ───…
[鋭くかかる言葉、それにパッと顔を上げ反射的に反論を口にしようとする。けど、その音が途中で止まった。
ウェルシュの顔が僅か、難し気に曇る。
これまでは。第二王子という立場であり、いかにウェルシュが施策を練ろうとも、その上には父王がいた。だからこそ、シュナウザーがウェルシュと親しく相談役のようなことをしていても、その彼の役職が監査局長であっても許されていたのだろう。
けれどもし、この先もそれが続くなら。
それは、兄の危惧も当たるだろうと───少なくとも、シュナウザー自身にその意思がなかったとしても、周囲はそうは見まいとも理解する。してしまうのだ。
だから言葉は途切れた。ふ…、と、息が落ちる。]