− 過去 − 1:=30
[ そんな邂逅の後、ギデオンの世話係にベリアンが指名された。
ギデオンはベリアンのいうことなら、よく耳を傾けたのだ。
報告を受けた王家からグラウコス家へも、よしなに、という働きかけがあったとか。
はじめの一月ほどは、幼児にも等しかったギデオンだが、ベリアンにつきまとって、しつこく「あれはなに?」を繰り返すうち、瞬く間に知識を得、一年もたつ頃には「男子、三日会わざれば刮目して相対すべし」などと古典を自在に引用し、楽器も剣も自在に操って、神童と噂されるようになっていた。
しかし、どれだけ洗練されようと、どこか無邪気な奔放さは残っていた。
それが特権階級ゆえか、生まれ持ったものなのかはわからない。
数年のうちに、"女神の子"という二つ名は、以前とはまったく別の意味を帯びるようになる。 ]