― 深夜 ―
ザザ……ッ、ザー……、……ッ
[ロザリオの石に仕組まれた通信機のノイズに、女は跳ね起きる。
その顔は修道女としてのそれと違い、今なお戦場を駆ける軍人の時と同じ険しいものだった]
「 警戒されたし、警戒されたし。 」
[近隣の村を滅ぼした人狼が潜伏している可能性があると、
雑音混じりの声が警告する]
「 発見次第殲滅せよ。その為の犠牲は問わない。 」
[非情な命令を下し、途切れるノイズ。
あとには銀嵐の荒れ狂う風の音だけが、室内の残される]
イエス、サー。
[女は短く応えて、通信機替わりのロザリオを強く握り締めた]