砂と血と蒸気に包まれた王子の姿は、やがて半身を起こした。金糸の眩い王子の髪は黒に染まり、コバルトブルーの眸は翡翠色へと変化を兆す。けれど、半身は取り戻せなかったのか、筋肉が剥き出しの赤黒い貌のままだった。「――Asterios…」半身をどろりと血に浸した黒い吸血種は、未だ完全覚醒しておらず。死に別れた恋人の名を、虚空へ向けて呼んでいた。やがて、男の半身は再び寝台へと崩れ落ち、王の間は静謐に包まれる。