霧の幻惑は攻撃の多くを逸らす結果を招くものの、妖魔の数は確実に減ってゆく。それに業を煮やしたか、それとも、対する者たちに興味でも抱いたか。ゆらり、霧が揺れて──甲高い笑い声が、響いた。『……彼の獅子王を仮初とはいえ退けしは、伊達ではない、という事か』『……良かろう、なれば妾自ら、相手をしてくれる』宣と共に揺れた霧の一部が左右に割れて。そこから姿を見せたのは──異形の老婆を思わせる姿。しかし、その周囲に渦巻く力は、それが只者でない事をはきと物語っていた。*