甲殻類の襲撃の間も、それは、波の下で海面を睨んでいた。一つ、二つ、眷属の気配が途切れる様子に、それは苛立ちを孕んだ唸りをあげる。それは、不吉な響きを伴い、海上へと響き渡る。怒りと苛立ち、それから異様な熱を孕んだその唸りが海風にな吹き散らされた直後──それは、波の下から海面へとその身を押し上げた。それによって生じる波、水飛沫。それらに重なるように、甲高い咆哮が響く。──本来ならば、東の海にあるべき、深き蒼の鱗の巨大な龍。それは、爛々と輝く真紅の瞳で、船団を睨み付けた。