熱に魘されたのか開いた上襟、それを掴んだ爪には赤黒い斑点が浮かび、事切れた彼の死の要因が常のものでないのはその現場を見た誰の目にも明らかだった。本土へ送った緊急事態の連絡は辛うじて繋がったものの、元より不調の通信機は、以後、耳飽きる程の潮騒の様な音を発し続け、何処にも繋がる事はなかった。