[額を重ねて微笑む男の瞳を、昂ぶる深紅が真っ向から射抜き]
…だったら余程、人を見る目がないのね。
斜に構えてばかりいないで、もっとよく見たらどうなの?
[在りのままの自分を見てしまえば、二度目などある筈もない。
人を脅かすべく生まれた身を理由に、卑屈になる心算はないが。
そのくらいの事は弁えているから、見透かされずに見ていられるよう、距離を挟むのに。
――全てを眼前に曝した後でも、もう一度同じ様に笑えるのか。
激情に任せ口走った言葉が、迸る魔力に絡み、呪言と成ったのも
気づかず。鼻先を擦り寄せる男から、そのままふいと顔を逸らした。
けれど、手を離せばそれが最後と知るから、振り解く事はなく]