[ひらひらと舞う蝶は、未だ居ただろうか。城主を失った異変に飛び去ってしまっただろうか。もしも、まだ居たのなら、視線をツイと投げ。] ―――…見てくれるなよ。 格好がつかない。[片腕を負傷したとして、折れる矜持は持たない。だが、代わりに、彼女に似る蝶に見られることを恥じた。色恋に関して利かない第六感は、蝶に気恥ずかしそうに、己の失態を隠して身を捻った。]