― 子供の憧憬 ―
[まだソマリアランが家に帰ってきて間もなくの頃である。
シンクレア卿が幼い息子を連れて、クロイス邸へと訪問した。
大人たちは難しい話があるということで、子供同士で遊んできなさい、といわれ。
ご挨拶にいたソマリアードは、ちゃんとした礼を大人たちにしたうえで、シェットラントの手を引いて庭へと出た]
「アラーン!」
[双子の片割れが呼ぶ声が聞こえて、のろのろとアランは顔を上げ、陽の出る庭へと出てきた。
その腕の中にあるのは竜の卵。
今もまた、窓からは見えない薔薇園の東屋でそれを温めていたのであった]