──涙の記憶──
[娘は、純粋なコラサーヴ人では
ありませんでしたから。
覚醒の年、皆が共鳴して一つになって
混ざり合うコラサーヴ人たちの中には
入ることができなかったのです]
かあさん、おねがい、
ひとりにしないで!
死んじゃうよ、風にさらわれて
死んじゃうよぉ……!
[ボロボロ泣きながら、必死に母と呼ぶ人に
縋り付こうとしたんです。
風の内戦、その嵐の中でした。
でも、今の娘によく似たその人は
その笑顔を娘に一度だけ向けると]
『あのお薬はね、あなたを
狼のように強くするんですって。
きっと、死なないわ。
死んだらきっと、養分になって
母さんたちと一つになれるわ』
やだあそんなの!
養分なんかやだああああ!!!!