[誰かが泣いた気がした。命落とす前に潰れてしまった耳は、音など拾えないはずなのに。男は音に誘われるように、ゆるゆると二階のバルコニーを見下ろせば]― あれから数刻後の話 ―…………。[そこには少女がいた>>58。生者であろう青年と共に、少女がいた。冷たくなった少年の姿の青年に縋るようにして悲しむ二人を見た。やがて二人は、少年の姿をした青年の体と共に、宿の中へと消えていく]………… [その後姿を視線で追いかけ]