【墓】 ならず者 ディーター

― 祭壇の傍らでカタリナと ―

［見てたよ、と言う彼女は不満そうに口を尖らせていて。
なのに、此方に手を振ってくれるものだから、どっちかにしろよ、なんて言って笑いそうになった。

でも、そんなことを言えばますますご機嫌を損ねることなんて目に見えていたから、なんとか飲み込んだ。

カタリナが応援してたのに、なんて言うから思わず目が泳いだ。
応援してもらえるような人間だったかなあ。どうかな。そんなことないだろうな。


──カタリナに近付く。
本当の意味で地に足がつかなくて、少しだけおっかなびっくり気味に歩いてしまった。酒を飲んでも飲んでなくても、いつも足元がふわふわしていたのに。

これはなかなかどうして、比較にならないものだ。
なにせ、地面が踏みしめられないわけだから。]