― もうひとつ、託したもの ―[戦場《いくさば》共に駆ける漆黒と巡り合ったのは、槍の修行に打ち込む日々の最中。 自身に刻まれし『印』の呪いと、漆黒に与えられし魔術の祝い。 二つの波長を均すために、と。 仔馬の時分から共にあり、共に鍛錬に励んだ黒馬は、ある意味では、自身の半身のようなものとも言えた。 誰とも運命を共にしない、と定めた自分に唯一沿うもの。 友とも、妹とも違う──けれど、同じくらい大切なもの。 だからこそ、漆黒が自分と共に死する事は赦さなかった。 未来《さき》を見届けてほしいという、願いの一端を託していたから]