[それが照れ隠しだということに気付けたのは、私が双子だからだろう。
あの仕草は、幼い頃の兄そのままだった。
成長してからは擦れ違ってばかりだった兄。
死の際には寿命を悟って諦観の様相を呈していて、野心が消えたことにより昔の兄に戻ったようにも見えた]
兄様。
[呼ばれまいとする兄の意に反し、私は彼に声をかける]
私、夢を諦めていないわ。
諦めないために、領主も継いだ。
家のことは、心配しないで。
[兄が家を護ろうとしていたのは本当だったのだと思う。
陰謀渦巻く世界では一瞬の油断も命取りだ。
兄が必死だったことが、領主となった今なら理解出来る。
私がそう言葉を向けると、兄は、ふん、と鼻を鳴らして背を向けてしまった。
その姿に私はクスクスと笑う]