──── 回想 10年前 ────
[バイオリンケースを投げつけ、逃げる。
どうやらそこはかなり大きな家らしかった。
一つ扉を開ければ長い廊下に出て、3つの扉が目に入る。
正面の扉が正解だろう。
開けるとそこは吹き抜けのホールのようだった。
豪奢なシャンデリアや二つに分かれた階段、大きな時計…そして、一際大きな扉。
────あそこから出れば、きっと外だ!
階段を駆け下りて一目散に扉へ向かう。
しかし、何かがおかしい。男は何故追ってこないのだろう。
そして、この扉に感じる違和感はなんだろう。
扉を開けようとした時、その違和感の意味を知った。
───────────ガシャンッ!
その扉には、違和感の正体────鎖と南京錠が鈍い光を放っていた。]