― 闇の中 ―[咳き込みながら目覚めた仔犬を>>+62、小蛇は瞬かぬ目で見つめる。闇の中に紛れ、時折赤い舌だけをちろちろと動かして、仔犬が水を浴びて戻ってくるのを、そしてあてどなく歩き出すのを、金の眼で追う。青の姿が見えなくなったころ、彼が倒れていたあたりへ寄って、ちらと官能の痕を舐めた。銀の鱗を鳴らしながら身体を震わせ、端から霧へとほどけていく。その霧もやがて流れて消え去った。]*