[廊下に人の気配がないことを確かめた後、声を潜めて囁く。……気心知れた同僚たちにも、敬愛する隊長にすら語ったことのない秘密を。]忘れたいひとが、いるのです。いえ──その方に、私のことを忘れてほしい、というほうが正しい……。[ことさら痛ましげなふりをするつもりはなかったのだけれど、その声は、己のものとは思えないほど苦しげだった。]