[行く先に、巨大な体躯があった。
銀の獣が居た。
冷えた紅は煌々と、ぎらりと光る牙が覗き、
ぽたぽたと赤い血が滴るその口元には、]
――…キャプテン・メリー!!
[咄嗟に地を蹴り(あるいは、それを模した動きであっただけかもしれないけれど)、その場にいる人たちの前に立つ。
思い出されるのは、つい先ほど自身の身体を引き裂いた、緑の人狼。
噛み砕かれた喉笛が、引き裂かれた肩が、途切れる意識の中食い荒らされたこの体が、その痛みを思い出し、震えかける。
けれども、ぎり、と拳を握りしめ、遠く向かい合う銀の獣を睨み据える。
やがて、獣は、嗤うように口元を歪め、消えた。]