ハダリーさん!?
[入ってきたのは、血で汚れたハダリーだった。
その血が自分のものとも思わず、怪我でもしたんじゃ、とオロオロとハダリーの周りを漂う。聞こえないと分かっていても、「大丈夫ですか?」と声をかける。
どこか気落ちしているように見える彼に、何があったのだろうと心配になった。
『人狼』かどうかは分からなかったけれど。いつも周りを気遣って、誠実にあろうとした彼を、ずっと信じたいと思っていた。
振り返ってみると、少し甘えていたのかもしれない。しっかりしていて、でもどこか寂しそうで。
そんなところがあの人に似ていた。抱き上げてもらったことも、あの人以外になかったから。
どこかで名前をくれた人と重ねて、「父親がいたら、こんな感じなのかな」と思っていたのかもしれない。
見た目の若いハダリーにそんなことを思うのは大変失礼だろうけれど。今更、気付くなんて。]