[かの異邦人は、穏やかで仕事熱心な人物だったという。
カスパルが"ラボ"から出てきた時には既に老年にさしかかっていたらしく、親しくしていた期間は長くはなかったようだが、この人懐っこい笑顔に向かってはかの老人も色々と話しやすかったのかもしれない。]
その……、モーリッツさんは、どうやってこういった部屋に出入りしていたんです?
鍵だとか、そういったものはないようですけれど。
[ひとりの職員として認められていた様子を聞く限り、まさかずっと誰かに付き添われていたわけでもあるまい。
そう思って尋ねれば、彼はあっさりと教えてくれた。
──永住を決めた異邦人には、"ラボ"で職員たちに埋め込まれるものと似たような装置が与えられるのだと。]