―味見準備中―
(そわそわ。そわそわ)
(すごいいいにおいなんだが。どどどうしよう。たのしみすぎる!)
(こ、こういうときは、そうだ、菓子を食べて気持ちをまぎらわ……)
(……いや、それは失礼だ。腹をすかせておかねば。うん。本でも読むか…)
(し、しかし落ち着かんぞ…くんくん…)
(やはり手伝えばよかったか…いやしかし俺に菓子を作る素養は…邪魔をしてはいかんしなあ…)
[架空の二国間で起こる戦争謀略小説を膝に開き。
究めて怜悧たる視線をページに落として、ぱらりと捲っている。
その内心がかくも千地に乱れていようとは、たぶん知らぬものには想像がつかなかっただろう。
今料理中の学友たちから見れば、犬がおとなしくソファに座ってごはんを待っているような、そういう光景だっただろうが*]