[――喧騒は届いていただろうか。いずれにしても]
――……アリーセ。
[いまいちど――彼女を、抱き締めて。]
その――気になるなら、船のなかを回ってくるといい。
私はきみから充分なものを貰ったし――、
乗客の私と違って、この船は、きみの日常だったのだろう。
……いや、もちろん。
こんな"猶予"は、いつ終わるか判らない。
だから、一時たりと君と離れたくないのは、そうなのだが……、
……しかし、君は気になっているようだし……、
であれば私としては、その、それを勧めるのが……、
[ごにょごにょと言い訳して]
……あるいは、君さえいいのなら――、
きみの過ごしていた世界を、私も目にしてみたいが――……、
[などとは、口にしただろうか――*]