[不思議だと感じはしても考える余裕はなかった。 アスファルトに倒れた女子高生の左足が、真っ赤に染まっていたから。]……しっかり! いま救急車を呼んだから! 大丈夫、君は助かる![近くのサラリーマンに携帯電話を返し、脱いだ上着を腰から腿の辺りに掛け、血を止めようと腿の付け根を圧す。 背中に誰かの鋭い視線を感じ、振り返る。ひとりの高校生男子が、野次馬の後ろに立っていた。ひとりだけ、表情が違っていたのが気になったが、少女の呻き声に、それは紛れていった。*]