…………………飲み物。[ぼそりと、しかし男に聞こえるように。男は、「あ!そうだった!水でいい?」とやけに明るい声で言う。私が頷くと、男は部屋を出て行った。────やった!これで……!バイオリンケースを手に取る。それは思ったより重かった。高価なものだったら…と気が引けたが、今はこれしかないのだ。扉付近に待機して男が戻ってくるのを待つ。心臓がドクン、ドクンと痛いくらいに脈を打っていた。ついに扉が開いたとき、私はバイオリンケースを投げつけてその部屋から逃げ出したのである。]