[彼の人が女の元に現れた時にも、
女はきっと、蹲ったまま、だっただろう。
立っていることでさえ不安で、何かを抱えていなければ安心できなかったから。
けれどその声は、とても暖かく、柔らかく、耳を撫でた。
ただ名前を呼ばれただけなのに、心を撫でる、その声は。]
あ……―――
[そこには、ずっと会いたかった人がいた。>>+52
死んでもなお、会いたかったひと。
一緒にいたかったひと。
そんな資格など、もうないのかもしれないけれど。
心を埋め尽くすように溢れる、この感情の、名前は、―――?
無事ではないと口ごもる相手に、嫌でもその現実をつきつけられる。
自身のことを認識していることに加えて、そんなことを言われては、事実として、認識するしかなかった。
と、相手からぽろりと零れた言葉を拾った。
会えて良かったと。―――それは自身も、思ったこと。
相手と同じ思いでいたことに、嬉しくなった。
しかし同時に、この状況で会えて良かった、なんて、
そう思うことの、なんて罪悪感か。
運命を、引きずってしまったと、いうのに。
だから]