[そして、非業な実験から時を経て。現在。
漸く適合者となり得る人間が見つかり
その人物には母親の胎内に居る状態から一定間隔を開けて
規定の年齢になるまでフェリクスの体細胞が投与され続けていた。
経過観察を欠かせないとされたその人物は…彼は。
どんなにしきたりから外れたことをしようとも、
家名に泥を塗るような真似をしようとも。
決して見做されることはなく、生きてきた。
家督を継ぐことを厭い、生き方を縛られることを厭うた彼は。
ネオ・カナンへ向かう船へ左遷のような扱いで移動させられたことも
その際に勘当の憂き目に遭ったことすらも、
全てが自らを観察対象とする"誰か"の掌の上だなどとは知らず。]