[この舞台上には、なぜか触れられても嫌悪感を覚えない人がいた。 “触れられる”ことではなく、“触れる”ことを避けていた唯一の存在があった。 けれど、それだけじゃ駄目なんだ。 完全に義父の束縛《のろい》を解いたことにはならない。 誰かに力を借りたとしても、最後には自分で打ち払うんだ。 そう強く思ったとき――少女の額から汗は消えていた。 がっちりと握手を交わしてから、ゆっくり手を離そうと。]