[――思えば僕らが見てきた屍体ってのは、真っ赤でバラバラで切り刻まれていて。
こんな、…こんな風に、綺麗にしてもらった遺体を見るのは初めてで、しかも――]
――僕は、僕なんかが、本当はこんなに綺麗にして貰う資格なんて…
[膝を抱えて震えていた。
僕は人狼だ。
己の腹を満たす為だけに、数多の街で殺しを繰り返してきた犯罪者だ。司法に掛かれば死刑は確実だし、そうでなくとも死ぬ時は野垂れ死んでドブ川に捨てられるのがお似合いだと、『僕ら』はそう思っていた。
僕には家族が居ない。自分で食べちゃったから。
僕には友達も居ない。ボスがそうなる様に仕向けていたから。
僕が死んで悲しむ人なんて、ましてや弔ってくれる人なんて、この世のどこにも居るはずがないと思っていたから。]
僕は… 『僕』は…っ!
[色んな感情がないまぜになって、頭の中がぐちゃぐちゃする。
やがて心が落ち着いて、溢れる涙が尽きるまで、しばしうずくまって居ることだろう*]